主な肘・手指の疾患

肘・手指のイメージ画像

主な肘・手指の病気として以下が挙げられます。

マレット指(槌指:つちゆび)

マレット指(槌指)ってどんな病気?

マレット指(槌指)のイメージ画像

マレット指は、指の第一関節(DIP関節)が曲がったままになり、自分で伸ばせなくなる状態です。指を伸ばす腱が切れてしまう「腱性マレット指」と、腱の付着部の骨が剥がれてしまう「骨性マレット指」の二種類があります。多くはスポーツでの突き指などが原因で起こることが多いです。

マレット指(槌指)の症状

初期段階
  • 指の一番先端の関節が曲がったままになり、自分で伸ばそうとしても伸びない
  • 指の曲がった関節に、痛みや腫れを伴うことがある
  • 他の手で支えると指が伸びるが、手を離すと再び曲がってしまう
症状が進行すると
  • 放置すると、時間が経つにつれて曲がった指が固まってしまうことがある
  • 腱性マレット指の場合、放っておくとその指の第二関節が過度に反りすぎてしまう「スワンネック変形(白鳥の首変形)」を引き起こすことがある
  • 骨性マレット指の場合、関節の脱臼を伴うことがある
その他の症状の特徴
  • 骨折を伴うかどうかで治療法が変わるため、正確な診断が重要である

マレット指(槌指)の原因

生活習慣関連の要因
  • 球技(特に野球など)でボールが指先に強く当たり、指の一番先端の関節が無理やり曲げられたり、過度に伸ばされたりすることによる突き指によって生じることが多い
  • 重いものを持ち上げたり、皿洗い中に指をぶつけたりするなど、日常生活で指先に強い力が加わる
  • 鋭利な刃物などで指を切ってしまい、指を伸ばす腱(伸筋腱)が損傷することでも発症する
その他の要因
  • 指を伸ばすための腱(伸筋腱)が、指の骨から剥がれる、または途中で切れてしまう「腱性マレット指」
  • 指の関節内で骨折が起こり、腱(伸筋腱)が付着している骨の断片が剥がれてずれてしまう「骨性マレット指」
  • 外傷以外に、関節リウマチなどの疾患が原因で起こることもある。

マレット指(槌指)の治療

薬物療法

薬物療法は、マレット指の初期の痛みや炎症を抑えることを目的として行われます。

  • 患部の痛みや腫れに対して、消炎鎮痛剤の内服や湿布などの外用薬を使用する
  • 痛みを和らげ、安静を保つことで、他の治療法の効果を高める
リハビリテーション

リハビリテーションの目的は、固定期間が終了した後に関節の動きを回復させ、伸展不全を予防することです。

  • 固定が外れた後、指のリハビリを開始し指の動きを少しずつ広げて、可動域の拡大を目指す
  • 指の伸びが不十分にならないように、夜間はしばらく装具を装着するなどして、慎重に関節の動きを回復させていく
装具療法

装具療法の目的は、指の第一関節を、指を伸ばした状態(伸展位)に保つことで、損傷した腱や骨を安静にして修復を促すことです。

  • 腱性マレット指では、原則として指の一番先端の関節を伸展位で6~8週間固定する装具(シーネやギプス)を使用する
  • 骨性マレット指で転位(ずれ)が少ない場合も、保存療法として装具固定が行われることがある
  • 固定期間中は、装具を自己で着脱せず、皮膚トラブルを防ぐためにも医師の指示に従って慎重に管理する
手術療法

手術療法の目的は、保存的治療では十分な効果が得られない場合や、骨折を伴う骨性マレット指で骨のずれが大きい場合に、指の形状と機能を回復させることです。

  • 腱性マレット指で、初期の伸展不足の角度(垂れ下がり)が大きい場合や、保存治療が困難な場合は、断裂した伸筋腱を縫合する手術が行われることがある
  • 腱性マレット指であっても、保存療法(装具固定)での改善が不十分な場合や、関節の安定性が損なわれている場合には、経皮的にワイヤー(鋼線)を入れて第一関節を伸展位で固定する手術が選択されることがある
  • 骨性マレット指では、関節内の骨折を正確に整復し、ワイヤーなどで強固に固定する「石黒法」などの手術が主体
  • 受傷から時間が経過し、関節の変形が進んでしまったマレット指(特にスワンネック変形を伴うもの)の場合、腱の再建手術などを行う

ヘバーデン結節

ヘバーデン結節ってどんな病気?

ヘバーデン結節のイメージ画像

ヘバーデン結節は、指の第一関節が赤く腫れて変形し、痛みを伴う原因不明の病気です。関節の背側の中央にコブ(結節)ができるのが特徴で、報告者であるヘバーデンの名にちなんで名付けられました。特に40歳以降の女性に多く見られ、すべての人が強い変形になるとは限らず、痛みの程度も様々です。

ヘバーデン結節の症状

初期段階
  • 指の第一関節が赤く腫れたり、変形して少し曲がってきたりする
  • 指の第一関節に鈍い痛みを感じることがある
症状が進行すると
  • 第一関節の背側にコブ状の硬い結節が形成され、変形がより顕著になる
  • 痛みが強くなり、強く物を握る動作が困難になるなど、日常生活に支障をきたす
  • 関節の動きが制限され、指がスムーズに曲げ伸ばしできなくなる
  • 第一関節の近くに水ぶくれのようなふくらみ(粘液嚢腫)ができることがある
その他の症状の特徴
  • 主に人差し指から小指にかけての第一関節に症状が出ることが多いが、親指にも見られることがある
  • 朝方に痛みが強く出たり、特定の動作で痛みが増したりすることがある
  • ミューカスシストが破裂すると、一時的に症状が和らぐこともあるが、感染のリスクも伴う

ヘバーデン結節の原因

ヘバーデン結節は、具体的なメカニズムはまだ完全には解明されていません。

加齢関連の要因
  • 一般的に40歳代以降の女性に多く発症することから、加齢とともに発生リスクが高まることが示唆されている
  • 特に閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)の減少が発症に関与しているという説が有力視されている
生活習慣関連の要因
  • 日常生活で指をよく使う人に発生しやすい傾向がある
  • 家事や仕事で指に繰り返し負担がかかることが、関節の変形を早める一因となる可能性がある

ヘバーデン結節の治療

薬物療法

関節の炎症を抑え、痛みを和らげることが目的です。

  • 痛みや炎症を抑えるために、湿布や塗り薬などの外用薬を使用する
  • 急性期で痛みが強い場合は、少量の関節内ステロイド注射を行う
リハビリテーション

指の関節を安静に保ち、痛みを軽減することが目的です。

  • 痛む時期は局所の安静を保つことが重要で、指先に過度な負担が生じることを避ける
  • 関節の可動域を無理のない範囲で維持する軽い運動を行うこともあるが、原則的には安静が優先される
装具療法

装具療法の目的は、第一関節を固定し、外部からの刺激や過度な動きから保護することで、痛みを軽減し、関節の安静を保つことです。

  • 痛む関節にテーピングを施したり、専用の指輪型の装具などを装着することで、関節の安定を図る
  • 急性期や痛みのある動作時に装着することで、痛みの軽減と関節の保護につながる
手術療法

手術療法の目的は、保存的治療で痛みが改善しない場合や、変形がひどくなり日常生活に支障をきたす場合に、関節の機能回復や変形の修正を行うことです。

  • コブ状の結節が大きくなり、日常生活の邪魔になる場合には、結節を切除する手術が行われる
  • 変形が進んで関節の不安定性が強い場合や、痛みで日常生活が送れない場合には、関節を固定する手術(関節固定術)が行われる
  • 関節固定術では機能的な制限が大きいと判断される場合には、シリコン製インプラントを用いた関節置換術が選択されることがある。ただし、指の第一関節への人工関節適用は第二関節(PIP関節)と比較して事例が少なく、適応は限られる

ブシャール結節

ブシャール結節ってどんな病気?

ブシャール結節のイメージ画像

ブシャール結節は、指の第二関節に生じる変形性関節症で、関節軟骨がすり減ることで変形、腫れ、痛みが現れます。ヘバーデン結節と同様に指の変形性関節症に分類され、特に中高年女性に多く見られます。進行すると指の動きが悪くなり、日常生活に支障をきたすことがあります。

ブシャール結節の症状

初期段階
  • 指の第二関節に痛みや腫れを感じる
  • 関節の周りが少し赤くなることがある
  • 指を動かすときに、ごわつきやこわばりを感じる
症状が進行すると
  • 指の第二関節がこぶ状に腫れて、変形が目立つようになる
  • 関節の痛みが慢性化し、強く物を握る動作(雑巾を絞るなど)が困難になる
  • 指を完全に曲げ伸ばしできなくなり、関節の可動域が制限される
  • 稀に、関節に水が溜まるケースもある
その他の症状の特徴
  • 主に人差し指から小指にかけての第二関節に発生することが多い
  • ヘバーデン結節(指の第一関節の変形)と合併して発症することもある
  • 熱感や赤みを伴う炎症が強い時期には、ペンや箸をうまく使えないなど、細かな作業が難しくなる

ブシャール結節の原因

ヘバーデン結節と同様に、具体的なメカニズムはまだ完全には解明されていません。

加齢関連の要因
  • 加齢とともに指の関節軟骨がすり減り、関節面の適合が悪くなることで、骨棘(こつきょく:骨のとげ)ができたり、関節が腫れたりする
  • 中高年の女性に多く見られることから、加齢による組織の変性や、更年期以降の女性ホルモン(エストロゲン)の減少が発症に関与していると考えられている
生活習慣関連の要因
  • 長年の家事や仕事で手や指を酷使すること(オーバーユース)が、関節軟骨への負担を増加させ、炎症や変形を促す要因となる
全身的な要因
  • 明確な原因は不明な部分も多いが、遺伝的な素因があると考えられている
  • 外傷や感染などによる二次性の変形ではなく、特に誘因がない「一次性(特発性)」に分類されることが多い
  • 肥満、糖尿病、心血管疾患などの代謝異常や、軽度の慢性炎症(いわゆる炎症性老化)も発症や進行に関わるとされている

ブシャール結節の治療

薬物療法

薬物療法の目的は、関節の炎症を抑え、痛みや腫れを軽減することです。

  • 痛みや炎症を和らげるために、湿布や軟膏、飲み薬(非ステロイド性消炎鎮痛剤)を使用する
  • 炎症が強い時期には、一時的に関節内へのステロイド注射を行うことがあるただし、軟骨障害を避けるため回数は限定される
  • 冷えを伴う場合には、末梢の血流を改善するビタミンE製剤や漢方薬(疎経活血湯、桂枝加朮附湯など)が併用されることもある
リハビリテーション

リハビリテーションの目的は、痛みが和らいだ段階で指の動きを改善し、関節の拘縮(硬くなること)を防ぐことです。

  • 指の関節をゆっくりと曲げ伸ばしする訓練を行い、可動域の維持や改善を目指す
  • 指の筋力維持運動を行うことで、変形に伴う機能低下を防ぐ
装具療法

装具療法の目的は、痛む第二関節を固定し、外部からの刺激や過度な動きから保護することで、痛みを軽減し、関節の安静を保つことです。

  • テーピングや専用の指用の装具(ヘバーデンリングなど)を用いて患部を固定し、安静を保つことで痛みを軽減する。
手術療法

手術療法の目的は、保存的治療によっても強い痛みや運動制限が改善しない場合や、日常生活に著しい支障をきたしている場合に、指の機能回復を目指すことです。

  • 関節形成術では、骨棘や滑膜を切除して痛みを軽減し、ある程度の可動域回復を図る
  • 関節の破壊が進行しているが、靭帯や骨量が保たれている場合には、人工関節に置き換える「人工関節置換術」を検討する
  • ブシャール結節では関節の可動性が重要であるため、指を固定してしまう関節固定術は通常選択されない
  • 人工関節置換術には、シリコン製インプラントを用いるシラスティック関節置換術や、金属・ポリエチレン製の表面置換型インプラントを用いる方法があり、症例に応じて使い分けられる。第二関節(PIP関節)への人工関節適用は第一関節(DIP関節)と比較して適応範囲が広く、痛みの軽減と可動域の維持を両立できる点が利点とされる

手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)

手根管症候群ってどんな病気?

手根管症候群のイメージ画像

手根管症候群は、手首の付け根にある「手根管」という狭いトンネルの中で、正中神経という神経が圧迫されることで、親指から薬指にかけての指にしびれや痛みが生じる病気です。初期には明け方に症状が出やすく、進行すると手の細かい作業が難しくなることがあります。女性に多く見られるのが特徴です。

手根管症候群の症状

初期段階
  • 親指、人差し指、中指、薬指の親指側にしびれや痛みを感じる
  • 特に明け方にしびれや痛みが強く現れ、目が覚めると手がしびれていることが多い
  • 手を振ったり、指を曲げ伸ばししたりすると、しびれや痛みが一時的に楽になる
症状が進行すると
  • 日中も常にしびれや痛みが続くようになる
  • 親指の付け根にある筋肉が落ちて、手のひらにへこみができる
  • 親指と人差し指で綺麗な丸(OKサイン)を作ることが難しくなる
その他の症状の特徴
  • 小指にはしびれが出ないことが、この病気の大きな特徴である
  • 手首を叩くと指先にしびれが響く「ティネル様サイン」や、手首を直角に曲げて保持するとしびれや痛みが悪化する「ファレンテスト」がでる

手根管症候群の原因

加齢関連の要因
  • 加齢に伴い、手首にある手根管内の滑膜性腱鞘がむくんだり、厚くなることで、正中神経が圧迫されやすくなる
  • 腱や靭帯などの組織が変性しやすくなることも、手根管内の空間が狭くなる原因となる
生活習慣関連の要因
  • 手を使いすぎることによる腱鞘炎が原因で症状が出ることがある
  • パソコン作業や家事、スポーツなどでの手の酷使が、手根管症候群の発症リスクを高める
全身的な要因
  • 妊娠・出産期や更年期の女性に多く見られるのは、女性ホルモンのバランスの乱れによる滑膜性腱鞘のむくみが原因と考えられている
  • 手首の骨折などの怪我、糖尿病、関節リウマチ、透析を受けている方にも発症しやすい

手根管症候群の治療

薬物療法

薬物療法の目的は、神経の炎症を抑え、しびれや痛みを軽減することです。

  • 神経の働きを助けるビタミンB12などの飲み薬や、炎症を抑える消炎鎮痛剤が処方される
  • しびれや痛みのある部分に塗る軟膏などの外用薬を使用する
  • 腱鞘炎の症状を抑えるために、手根管内にステロイドと局所麻酔薬を混ぜた注射を行う
リハビリテーション

リハビリテーションの目的は、手根管内の圧力を軽減し、正中神経への負担を減らすことで、しびれや痛みを改善することです。

  • 痛みのない範囲で手首や指のストレッチを行う
  • 親指の筋肉が弱っている場合、柔らかいゴムボールを握る、洗濯バサミをつまむなどの運動を行う
  • 術後の回復期には、前腕、手指、術創部周囲をマッサージし、皮膚や腱の柔軟性を回復させる
装具療法

装具療法の目的は、手首の過度な動きを制限し、手根管内の圧力を軽減することで、神経への負担を減らし、症状を和らげることです。

  • 手首の装具(シーネやサポーター)を装着し、手首を安静に保つ
  • 特に就寝時に手首が不自然に曲がるのを防ぐため、夜間固定が有効である
手術療法

手術療法の目的は、保存的治療を続けても症状が改善しない場合や、母指球筋の萎縮が進んでいる場合、または手根管内に腫瘤がある場合に、神経への圧迫を解除し、症状の進行を止めて機能回復を目指すことです。

  • 手根管を広げる「手根管開放術」が行われる。
  • 内視鏡を用いた「鏡視下手根管開放術」や、小さな切開による「直視下手根管開放術」も行われる
  • 術後はすぐに手指を動かすリハビリを開始し、手のこわばりを防ぐ

ばね指(弾発指:だんぱつし)

ばね指(弾発指)ってどんな病気?

ばね指(弾発指)のイメージ画像

ばね指は、指を曲げ伸ばしする際に使う腱と、その腱が通るトンネルのような腱鞘が炎症を起こし、スムーズな動きができなくなる病気です。指を伸ばそうとすると、カクンとバネのような動きを伴って伸びるのが特徴です。指の付け根に痛みや腫れが生じ、悪化すると指が動かせなくなることもあります。

ばね指(弾発指)の症状

初期段階
  • 指の付け根に痛みを感じる
  • 指の付け根が少し腫れたり、熱っぽくなったりする
  • 朝方に症状が強く現れ、日中に指を使うと痛みが軽減することもある
症状が進行すると
  • 指を曲げた後、自分の力ではスムーズに伸ばせなくなり、反対の手で助けないと伸びない、あるいは途中でカクンとバネのように伸びる(ばね現象)
  • 指の付け根を押すと痛みが強くなる
  • ばね現象がさらに悪化すると、指が完全に伸びきらず、動かせない状態になる
その他の症状の特徴
  • 親指、中指に多く発症するが、薬指、小指、人差し指にも見られることがある

ばね指(弾発指)の原因

加齢関連の要因
  • 加齢に伴い、指を動かす腱や腱鞘の組織が変性し、柔軟性が失われやすくなるため、炎症や引っかかりが生じやすくなる
  • 女性ホルモンの分泌量の変化(更年期など)が、腱鞘炎の発症に関わる
生活習慣関連の要因
  • 指を日常的に酷使すること、特に手を使う仕事(パソコン作業、裁縫など)やスポーツ(ゴルフ、野球など)
  • 指に繰り返し負荷がかかることで、腱と腱鞘の間に摩擦が生じやすくなり、炎症を引き起こす
その他の要因
  • 糖尿病、関節リウマチ、透析を受けている患者さんに発症しやすい傾向がある
  • 妊娠・出産期の女性は、ホルモンの変化が腱鞘炎のリスクを高める

ばね指(弾発指)の治療

薬物療法

薬物療法の目的は、指の付け根の炎症を抑え、痛みや腫れを和らげることです。

  • 痛みを軽減するために、湿布や塗り薬などの外用薬を使用する
  • 腱鞘内にステロイド注射を行い、直接炎症を抑える
リハビリテーション

リハビリテーションの目的は、腱の滑走性を改善し、指の動きをスムーズにすることです。

  • 固定療法と並行して、痛みが軽減した範囲で、指の屈伸運動などを行う
  • 具体的には、テーブルなどに患側の手を置き、良い方の手で悪い指をゆっくりと曲げ伸ばしする運動などを行う
装具療法

装具療法の目的は、指の過度な動きを制限し、炎症部位を安静に保つことで、症状の緩和と腱鞘の回復を促すことです。

  • 局所の安静(シーネ固定も含む)を保つために、指や手首を固定する装具を使用する
  • 夜間のみ固定することが多いが、痛みが強い場合は日中も装着することを推奨
  • 指の形や可動域に合わせて、個別に取り外し可能な装具を作成することがある
手術療法

手術療法の目的は、前述した治療を続けても症状が改善しない場合や、再発を繰り返す場合に、腱が引っかからずに動けるようにすることです。

  • 腱鞘の一部を切開する「腱鞘切開術」を行う
    これは、狭くなっている腱鞘を切り開き、腱の通り道を広げる手術である

デュプイトラン拘縮(こうしゅく)

デュプイトラン拘縮ってどんな病気?

のイメージ画像
(図)デュピュイトラン拘縮│日本整形外科学会

デュプイトラン拘縮は、手のひらの皮膚の下にある「手掌腱膜」という線維性の膜が硬くなり、指が少しずつ曲がって伸びにくくなる病気です。指の付け根や手のひらにしこり(硬結)ができ、進行すると最終的に指が完全に伸ばせなくなり、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。特に薬指や小指に多く見られ、痛みを伴わないことがほとんどです。

デュプイトラン拘縮の症状

初期段階
  • 手のひらにしこり(硬結)や小さなへこみができる
  • 皮膚の表面にしわが寄ったり、皮膚が突っ張ったりする感覚がある
  • しこりに軽い痛みや違和感を感じることがあるが、ほとんどは痛みがない
症状が進行すると
  • 手のひらのしこりが大きくなり、ひも状の硬いしこり(拘縮索)となって指の方へ伸びていく
  • 指が徐々に曲がり始め、完全に伸ばせなくなる
  • 曲がった指が邪魔をして、手のひらを机にぴったりとつけられない
その他の症状の特徴
  • 薬指や小指によく見られるが、他の指や足の裏に発生することもある
  • 通常、痛みや腫れを伴うことは少ない
  • 一度発症すると自然に治ることはなく、症状は少しずつ進行していく傾向がある

デュプイトラン拘縮の原因

詳しい原因は不明な点が多いです。

加齢関連の要因
  • 高齢の男性に多く見られることから、加齢が発症に関わっていると考えられている
  • 加齢に伴う組織の変化が、手掌腱膜の異常な肥厚や収縮に影響している可能性もある
生活習慣関連の要因
  • 手のひらに繰り返し小さな外傷やストレスが加わることが、手掌腱膜の線維化(硬くなる)や肥厚(厚く大きくなる)を誘発する一因ではないかという説もある
その他の要因
  • 糖尿病の患者さんに多く見られる傾向がある
  • 遺伝的な要因も関連しており、血縁者に同じ病歴がある場合、発症リスクが高いとされている
  • アルコール性肝障害やてんかん治療薬の服用なども関連が指摘されることがある

デュプイトラン拘縮の治療

薬物療法

薬物療法の目的は、硬くなった組織(拘縮索)を分解し、指の曲がりを改善することです。

  • 痛みがある場合、鎮痛剤の内服剤や外用剤の使用を検討
リハビリテーション

リハビリテーションの目的は、手術後の指の動きを回復させ、再び拘縮が進まないようにすることです。

  • 指の曲げ伸ばし運動などを積極的に行い、指の可動域(動く範囲)をできるだけ回復させる
装具療法

装具療法の目的は、手術後の指が再び曲がってしまわないように、伸ばした状態を保つことです。

  • 手術後には、夜間伸展位固定として、指をまっすぐに保つための装具(スプリント)を装着する
    数か月にわたって就寝時に装着する
手術療法

手術療法の目的は、日常生活に支障をきたす指の変形がある場合に、皮膚の突っ張りを解消し、指を伸ばせるようにすることです。

  • 皮膚を切開し、異常に肥厚し収縮した手掌腱膜やひも状の拘縮索を取り除く「腱膜切除術」を行う

ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎:きょうさくせいけんしょうえん)

ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)ってどんな病気?

ドケルバン病のイメージ画像

ドケルバン病は、親指を動かす腱と、その腱が通るトンネル(腱鞘)が炎症を起こし、腱の滑りが悪くなることで、手首の親指側に痛みや腫れが生じる腱鞘炎の一種です。特に親指を広げたり動かしたりする際に強い痛みが走り、赤ちゃんを抱っこするお母さんや、手を酷使する方に多く見られます。

ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)の症状

初期段階
  • 親指を動かしたり広げたりする際に、手首の親指側(母指側)に痛みや違和感を感じる
  • 軽い腫れを感じることがある
症状が進行すると
  • 手首の親指側の痛みが強くなり、日常生活で物をつかんだり、持ったりすることが困難になる
  • 親指や手首を少し動かすだけでも強い痛みが生じ、仕事や家事に支障が出る
  • 痛む場所が赤く腫れ、熱を持つこともある
その他の症状の特徴
  • 母指の付け根付近に、コリコリとしたしこりのようなものを感じることがある
  • スマートフォンの操作やパソコン作業など、指をよく使う人に増えていることから「スマホ腱鞘炎」とも呼ばれる

ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)の原因

加齢関連の要因
  • 加齢に伴い腱や腱鞘の組織が変性し、柔軟性が低下することで、摩擦による炎症が起こりやすくなる
  • 更年期に入ると女性ホルモンのバランスが変化し(エストロゲン減少など)、腱や関節を保護する作用が弱まるため、発症リスクが高まる
生活習慣関連の要因
  • 育児(授乳や抱っこなど)で親指を酷使する、スマートフォンを片手で操作するなど、親指を使いすぎることで腱と腱鞘に摩擦が生じ、炎症が起きる
  • 美容師、ピアニスト、料理人など、手首や指を細かく使う職業の人がなることが多い
  • スポーツ(テニス、ゴルフなど)で、親指や手首に繰り返し負担がかかることで起こりやすい
その他の要因
  • 妊娠・出産期の女性は、ホルモンバランスの変化(プロゲステロンの増加)により腱鞘が収縮しやすくなり、腱鞘炎を発症しやすい
  • 手首の骨の構造によっては、腱鞘が狭くなりやすく、炎症が生じやすい体質の人もいる

ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)の治療

薬物療法

炎症を抑え、痛みや腫れを和らげることが目的です。

  • 非ステロイド性消炎鎮痛剤の飲み薬や湿布、塗り薬などで、痛みや炎症を抑える
  • 腱鞘内にステロイド注射を行うことで、直接炎症を抑え、症状の改善を図る
リハビリテーション

リハビリテーションの目的は、炎症部位の負担を軽減し、柔軟性を高めることで痛みの再発を防ぐなど、症状の改善と機能回復を促すことです。

  • 痛みのない範囲で手首や親指を動かす運動を行い、可動域を維持する
  • 温熱療法などで血行を促進し、痛みを緩和する
  • 症状に応じて、ストレッチや筋力トレーニングを行う
装具療法

装具療法の目的は、手首や親指の動きを制限し、患部を安静に保つことで、炎症の沈静化と症状の回復を促すことです。

  • 手首や親指を固定するシーネ(固定具)やサポーターを装着し、患部に余計な負担がかからないようにする
手術療法

手術療法の目的は、保存的治療で改善が見られない場合や、再発を繰り返す場合に、恒久的に腱の圧迫を取り除き、痛みや機能障害を改善することです。

  • 腱鞘を切開し、狭くなった腱鞘の屋根を開放することで、腱がスムーズに動けるようにする(腱鞘切開術)
  • 手術の際には、腱を分けている隔壁も切除されることがある

母指CM関節症(ぼししーえむかんせつしょう)

母指CM関節症ってどんな病気?

母指CM関節症のイメージ画像

母指CM関節症は、親指の付け根(手首に近い部分)にある「母指CM関節」という関節が、加齢や使いすぎによってすり減り、痛みや変形が生じる病気です。この関節は、親指を自由に動かすために重要な役割を担っており、病気が進行すると、物をつまんだり、瓶の蓋を開けたりといった動作が難しくなり、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。特に閉経後の女性に多く見られます。

母指CM関節症の症状

初期段階
  • 親指の付け根(手首に近い部分)に痛みを感じる
  • 特に物をつまんだり、握ったり、ねじったりする際に痛みが出る
  • ペットボトルの蓋を開ける、ドアノブを回すなどの動作で痛みが強くなる
症状が進行すると
  • 親指の付け根の関節が腫れてきて、親指が「ハの字」のように変形する(母指外転位変形、M字変形)
  • 変形が進むと、親指が他の指の付け根に向かって傾いてしまい、見た目も変わる
  • 関節が不安定になり、動きが悪くなる
  • 重いものを持つことや、細かい作業が困難になるなど、日常生活に支障をきたす
その他の症状の特徴
  • 痛みの他に、親指の付け根で「コキッ」という関節が擦れるような音がしたり、骨が軋むような感覚を覚えることがある

母指CM関節症の原因

加齢関連の要因
  • 加齢に伴う軟骨のすり減りが主な原因で、関節軟骨の摩耗や変性が進行する
  • 関節を支える靭帯が緩んでくることも、関節の不安定性を増し、病気の進行を早める
  • 閉経後の女性は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少により関節の軟骨や靭帯が弱くなりやすく、発症リスクが高まる
生活習慣関連の要因
  • 親指を頻繁に使いすぎること(過度の使用)が、関節軟骨への負担を蓄積させ、炎症や摩耗を引き起こす
  • 手首や指を酷使する家事(雑巾を絞るなど)、仕事(タイピングや料理など)、趣味(手芸、ゴルフなど)が原因となることがある
その他の要因
  • 生まれつき関節の形状や靭帯の強度に個人差があり、もともとCM関節が不安定な人もいる
  • 過去に親指の付け根を骨折したなどの外傷が原因で、二次的にCM関節症を発症することがある

母指CM関節症の治療

薬物療法

関節の炎症を抑え、痛みを和らげることが目的です。

  • 痛みを和らげるために、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の飲み薬や湿布、塗り薬などの外用薬を使用する
  • 関節内の炎症が強い場合は、ステロイドの関節内注射を行い、直接炎症を抑える。効果は一時的であるため、長期的な治療法とはならない
リハビリテーション

リハビリテーションの目的は、親指の筋肉を強化し、関節の安定性を高め、痛みを軽減して日常生活での動きをスムーズにすることです。

  • 親指の付け根の筋肉を強化する運動や、関節の柔軟性を保つストレッチを行う
  • 生活動作の中で親指への負担を減らす方法や、手を使った作業を効率的に行うための工夫を指導する
  • 物理療法(温熱療法など)を併用することもある
装具療法

装具療法の目的は、不安定なCM関節を安定させ、親指の動きを制限することで、関節への負担を軽減し、痛みを和らげることです。

  • 親指の付け根の関節を固定するサポーターや装具(シーネなど)を装着する
  • 特に痛みがある動作時や、夜間の就寝時に装着することが効果的である
手術療法

手術療法の目的は、保存的治療を続けても症状が改善せず、日常生活に大きな支障がある場合に、痛みの原因となっている関節の問題を根本的に解決することです。

  • 痛みのある関節の骨を削り、その部分に腱を挿入する「関節形成術(関節切除形成術)」を行う
  • 完全に機能が失われた場合や痛みが激しい場合には、人工関節に置き換える「人工CM関節置換術」を行う

TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷:さんかくせんいなんこつふくごうたいそんしょう)

TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)ってどんな病気?

TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)のイメージ画像

TFCC損傷は、手首の小指側にある「三角線維軟骨複合体(TFCC)」という軟骨と靭帯の集まりが傷つく病気です。TFCCは、手首を安定させたり、衝撃を吸収したりする大切な役割を担っており、ここが傷つくと手首の小指側に痛みが生じ、特にひねる動作や手首を小指側に曲げる動作で痛みが増します。転倒やスポーツなどによる外傷の他、繰り返しの負担によっても起こります。

TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)の症状

初期段階
  • 手首の小指側や手首をひねる動作で痛みを感じる
  • 瓶の蓋を開ける、ドアノブを回す、テニスやゴルフのスイング時などに痛みが出やすい
症状が進行すると
  • 手首の痛みが増し、常に痛むようになることがある
  • 手首の不安定感や、動かすたびに「カクカク」といったクリック音がしたり、摩擦音がしたりする
  • 手首の可動範囲が狭まり、日常生活動作に支障をきたす

TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)の原因

加齢関連の要因
  • 加齢とともにTFCCの組織が変性し、柔軟性が低下したり、摩耗しやすくなったりすることで損傷が生じやすくなる
  • 手首に繰り返しの負担がかかることで、加齢と相まって損傷が進むことがある
生活習慣関連の要因
  • 転倒して手をついた際など、手首に強い衝撃が加わった時
  • 野球のバッティング、テニスのトップスピン、ゴルフのスイングなど、手首に強いひねりや軸圧、繰り返しの負担がかかるスポーツ活動
  • 柔道で相手を掴む動作や、体操でバーを握る動作など、手首に不自然な力が加わる状況
その他の要因
  • 手首の骨の構造によって、TFCCに負担がかかりやすい人がいる
  • 手関節の柔軟性が過度である、または反対に硬いなど、個人の骨格や関節の特性も関連することがある
  • 手首を過度に使いすぎること(オーバーユース)が損傷のリスクを高める

TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)の治療

薬物療法

薬物療法の目的は、炎症を抑え、痛みや腫れを和らげることです。

  • 痛みを抑えるために、非ステロイド性消炎鎮痛剤の内服や、湿布などの外用薬を使用する
  • 痛みが強い場合には、ステロイドと局所麻酔薬を組み合わせた注射を患部に行い、炎症を直接抑える
リハビリテーション

リハビリテーションの目的は、手首の機能回復、筋力強化、そして痛みの軽減を目指すことです。

  • 治療初期は、手首の関節の拘縮(関節が硬くなること)を防ぐため、掌屈・背屈運動(手のひら側に曲げたり、甲側に反らしたりする運動)を行い、回旋運動(ひねる動き)は禁止する
  • 手首の不安定性を改善するための筋力トレーニングを段階的に行う
  • 日常生活やスポーツ活動への復帰に向けて、機能訓練を進める
装具療法

装具療法の目的は、損傷したTFCCを保護し、手首を安静に保つことで、症状の悪化を防ぎ、治癒を促すことです。

  • 装具を手洗いや入浴時以外はほぼ24時間装着し、手首の安定を図る
  • 3か月間程度の装着が推奨され、過度な回旋運動を制限する
  • 症状が改善しない場合は、手術を検討することもある
手術療法

手術療法の目的は、保存的治療を3か月以上続けても症状が改善しない場合や、強い痛みや手首の不安定性が残る場合に、損傷したTFCCを修復し、手首の機能を取り戻すことです。

  • 関節鏡を用いた手術により、剥がれた橈尺靭帯の修復を行う
  • 関節円盤が損傷している場合、痛みの原因となっている部分を切除する「関節鏡視下部分切除術」を行うことで、痛みを軽減する
  • 手術後は、損傷の部位や術式によって異なるが、一般的に約4〜6週間の外固定(ギプスなど)の後、段階的にリハビリを開始する

ガングリオン

ガングリオンってどんな病気?

ガングリオンのイメージ画像

ガングリオンは、皮膚の下にできるゼリー状の液体が詰まった良性の「しこり」です。手首の甲側に最もよく見られますが、手のひら側や指、足首など全身の様々な場所にできます。通常は無症状で、見た目の問題が主ですが、神経の近くにできた場合はしびれや痛み、時には麻痺を引き起こすこともあります。

ガングリオンの症状

初期段階
  • 手首の甲側や手のひら側、指の付け根などに、米粒大からピンポン玉大のしこりができる
  • しこりの硬さは軟らかいものから硬いものまで様々である
  • ほとんどの場合、痛みや他の症状はない
症状が進行すると
  • しこりが大きくなると、見た目が気になったり、周囲の組織を圧迫したりすることがある
  • 神経のすぐ近くにできたガングリオンが大きくなると、神経を圧迫して、しびれや痛みが生じることがある
  • まれに、指の動きにくさ(麻痺感)を引き起こすこともある
その他の症状の特徴
  • 外部からは触れないほど小さい「隠れたガングリオン」もあり、原因不明の手首の痛みの原因になっている場合もある。
  • 足の関節周辺や肩甲部、稀には骨や筋肉、神経の中にもできることがある
  • 良性腫瘍のため、悪性化する心配はない
  • 自然に消えたり、つぶれて小さくなったりすることもある

ガングリオンの原因

明確な原因はわかっていません。

生活習慣関連の要因
  • 関節や腱鞘への慢性的な機械的刺激や、繰り返しの動作による負荷が関与している可能性が示唆されている
全身的な要因
  • ガングリオンは、関節を包む袋(関節包)や腱の周りを覆う鞘(腱鞘)から発生することが多い
  • 関節液や腱と腱鞘の潤滑油である滑液が、ガングリオンの袋の中に流れ込み、そこで濃縮されてゼリー状に変化することで形成される
  • 特定の年齢層に限定されず、若年層から高齢者まで幅広く見られるが、特に20〜50代の女性に多いとされている

ガングリオンの治療

薬物療法

薬物療法は、症状緩和のために用います。

  • 神経症状がある場合の痛みやしびれを和らげるための鎮痛剤などを使用する
リハビリテーション

周囲の筋肉や関節の機能を改善し、負担を軽減する目的で行います。

  • ガングリオンによって関節の動きが悪くなっている場合に、可動域を改善する運動を行う
  • 神経症状がある場合に、神経の滑走性を高めるリハビリが行う
装具療法

装具療法は、ガングリオンの直接的な治療として広く用いられることは稀ですが、患部を安静に保つ目的で考慮されることがあります。

  • 神経症状がある場合など、一時的に関節の動きを制限し、患部への負担を軽減するためにサポーターなどを用いる
手術療法

手術療法の目的は、保存的治療で効果が見られない場合や、痛みやしびれなどの神経症状が強い場合に、ガングリオンを完全に取り除くことです。

  • 注射器でゼリー状の内容物を吸引する治療法がある。この方法は手軽に行えるが、再発する可能性も高い
  • 吸引しても繰り返し再発する場合や、神経を圧迫して痛み、しびれ、麻痺などの症状がある場合には、手術によってガングリオンを摘出する

肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)

肘部管症候群ってどんな病気?

肘部管症候群のイメージ画像

肘部管症候群は、肘の内側にある「肘部管」という狭いトンネルの中で、尺骨神経(手の小指側と薬指側の感覚と筋肉の動きを司る神経)が圧迫されたり引っ張られたりして生じる神経の障害です。この神経が傷つくことで、小指や薬指にしびれや痛みが生じ、進行すると手の筋肉がやせて細かな作業が難しくなることがあります。様々な原因によって発症しますが、早期に診断し適切な治療を行うことが大切です。

肘部管症候群の症状

初期段階
  • 小指と薬指の半分(小指側)にしびれや痛みを感じる
  • 肘を曲げた状態にすると、しびれや痛みが強くなることがある
症状が進行すると
  • 手の甲にある筋肉や小指の付け根の筋肉が痩せてくる
  • 親指や人差し指、小指を開いたり閉じたりする動きが困難になる
  • 箸を使ったり、ボタンを留めたりといった細かな手の作業がしにくくなる
  • 小指と薬指が変形し、「鷲手(わしで)」と呼ばれる特徴的な手の形になることがある
その他の症状の特徴
  • 肘の内側を軽く叩くと、小指と薬指に沿って電気が走るようなしびれを感じることがある(ティネルサイン)
  • 夜間や明け方に痛みやしびれが悪化することがある
  • しびれや痛みの感覚だけでなく、熱さや冷たさの感覚が鈍くなることもある

肘部管症候群の原因

加齢関連の要因
  • 加齢により肘の骨が変形したり、骨棘(骨のとげ)ができたりすることで、肘部管内のスペースが狭くなり、尺骨神経が圧迫されやすくなる
  • 神経を固定している靭帯が加齢により硬くなったり肥厚したりすることでも神経への圧迫が増す
生活習慣関連の要因
  • 野球や柔道など、肘に負担のかかるスポーツを長年行っている場合、尺骨神経が慢性的に圧迫されたり牽引されたりして発症することがある
  • 長時間のデスクワークで肘をテーブルに強く当てるなど、肘に繰り返し圧力がかかる
  • 肘を曲げた状態で長時間電話をする、本を読むといった習慣も、神経への圧迫を強める可能性がある
全身的な要因
  • 子どもの頃の骨折(特に上腕骨顆上骨折などによる肘の変形)が原因で、大人になってから尺骨神経が引き伸ばされたり圧迫されたりして発症することがある
  • 肘部管の中にガングリオンなどの腫瘤ができることで、尺骨神経が圧迫される場合がある
  • 関節リウマチなどの炎症性疾患も、関節周辺の滑膜炎による神経圧迫を引き起こす可能性がある

肘部管症候群の治療

薬物療法

薬物治療の目的は、神経の炎症を抑え、しびれや痛みを軽減することです。

  • 神経の回復を助けるビタミンB12製剤の内服
  • 炎症を抑え、痛みを和らげる非ステロイド性消炎鎮痛剤の飲み薬や湿布などの外用薬
  • しびれが強い場合には、神経の症状に特化した薬が用いられる
リハビリテーション

リハビリテーションの目的は、肘への負担を減らし、関節の動きを改善することで、神経への刺激を最小限に抑えることです。

  • 肘や前腕の筋肉を柔らかくするためのストレッチを行う
  • 神経のスムーズに動くことを目指し、神経滑走運動(神経モビライゼーション)を行う
  • 必要に応じて、理学療法士が症状に合わせた動作指導や、姿勢の改善指導を行う
装具療法

装具療法の目的は、肘関節の過度な曲げ伸ばしを制限し、神経への圧迫や牽引を避けることで、安静を保ち症状を和らげることです。

  • 夜間の就寝時に肘を深く曲げることを防ぐため、肘のサポーターや装具を装着する
  • 意識しても肘を曲げてしまう場合は、タオルなどで肘を包むなどの工夫も有効
手術療法

手術療法の目的は、保存的治療では効果が見られない場合や、麻痺が進行している場合に、尺骨神経への圧迫を取り除き、神経の機能を回復させることです。

  • 尺骨神経を圧迫している靭帯を切離したり、ガングリオンなどの腫瘤を切除する
  • 神経の緊張が強い場合は、骨を削ったり、尺骨神経を肘の前方へ移動させる「尺骨神経前方移行術」を行う
  • 肘の変形(外反変形など)が強い場合は、変形そのものを矯正する手術を検討
  • 重度の麻痺で筋肉の委縮が著しい場合は、つまみ動作などの力を取り戻すために腱移行術(腱移植術)を行う

テニス肘(上腕骨外側上顆炎:じょうわんこつがいそくじょうかえん)

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)ってどんな病気?

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)のイメージ画像

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、肘の外側から前腕(肘から手首までの部分)にかけて痛みが生じる病気です。これは、手首や指を動かす筋肉が付着する肘の外側の骨(上腕骨外側上顆)に炎症が起こり発症します。テニスプレイヤーに多く見られたことからこの名前がありますが、実際にはテニスをしない人にも、家事や仕事で手や腕をよく使うことで起こる可能性があります。

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)の症状

初期段階
  • 物をつかんだり、持ち上げたりする時に肘の外側に痛みを感じる
  • タオルを絞る動作やドアノブを回す動作で肘が痛む
  • 安静にしている時は痛みがほとんどないことが多い
症状が進行すると
  • 軽度な動きでも肘に痛みが走るようになり、日常生活に支障をきたす
  • 重いものを持ち上げることが困難になる
  • 安静時にも鈍い痛みや違和感が続くようになる
  • 手首や指を動かす力が入りにくくなる場合もある
その他の症状の特徴
  • 肘の外側から前腕にかけて痛みが広がるのが特徴
  • 特定の動作で肘に強い力がかかることで発症するため、片方の腕だけに症状が出ることが多い

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)の原因

加齢関連の要因
  • 中高年(特に40代以降)が発症しやすい
  • 年齢を重ねるにつれて、肘の腱が少しずつ傷んで弱くなることが主な原因と考えられている
  • 腱組織の柔軟性や強度が低下し、繰り返しの動作によるダメージを受けやすくなる
生活習慣関連の要因
  • テニスの手首を返す動作を繰り返すことで肘に負担がかかる
  • ゴルフやバドミントン、卓球など、手や腕を頻繁に使うスポーツでもなりやすい
  • パソコンのキーボード操作やマウスの使用、重いフライパンを持つ、雑巾を絞るなど、家事や仕事で手首を酷使する動作も負担がかかり発症する

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)の治療

薬物療法

薬物治療の目的は、肘の炎症を抑え、痛みを取り除くことです。

  • 湿布や塗り薬などの外用薬を使用して、痛みのある部分に直接作用させる
  • 痛みが強い場合は、炎症を抑えるための飲み薬(非ステロイド性消炎鎮痛剤)を服用する
  • 肘の外側に局所麻酔薬とステロイドの混合液を注射し、痛みを一時的に緩和する
リハビリテーション

リハビリテーションの目的は、肘や手首の筋肉の柔軟性を高め強化することで、痛みを軽減し再発を防ぐことです。

  • 手首や指のストレッチをこまめに行い、硬くなった筋肉や腱を柔らかくする
  • 痛みが出ない範囲で、手首や前腕の筋力を強化するトレーニングを行う
  • 理学療法士の指導のもと、痛みを誘発しにくい動作や身体の使い方を学ぶ
装具療法

装具療法の目的は、痛む腱への負担を軽減し、肘を安静に保つことです。

  • テニス肘専用のバンド(テニスエルボーバンド)を肘の少し手首側に装着することで、筋肉が骨を引っ張る力を弱め、負担を分散させる
手術療法

手術療法の目的は、保存的治療で改善が見られない慢性的な痛みを根本的に解決することです。

  • 手術方法としては、筋膜切開術(腱の付着部を切開して緊張を和らげる)、切除術(炎症を起こした組織を取り除く)、前進術(筋肉の付着部を移動させる)、肘関節鏡視下手術(小さなカメラを挿入して行う)など
  • 再生医療の一種である体外衝撃波療法やPFC-FD療法などが選択肢としてある

関節リウマチ

関節リウマチってどんな病気?

関節リウマチのイメージ画像

関節リウマチは、関節に炎症が起きることで痛みや腫れが生じ、放置すると関節が変形してしまう病気です。これは免疫システムが誤って自身の体を攻撃してしまう自己免疫疾患の一種で、全身の関節だけでなく、肺や血管など関節以外の臓器にも影響を及ぼすことがあります。早期に適切な治療を始めることが、関節の破壊や全身への影響を防ぐ上で非常に重要です。

関節リウマチの症状

初期段階
  • 朝起きた時に、手足の指の関節がこわばって動かしにくいと感じる
  • 関節の腫れや痛みがある。特に手首、手の指の付け根や第二関節に症状が出やすい
  • 初期の痛みや腫れは、体の左右対称に現れることが多い
症状が進行すると
  • 関節の炎症が続き、軟骨や骨が破壊され、関節が変形してしまう
  • 指が曲がったり(スワンネック変形、ボタン穴変形)、手首が小指側に曲がったりする
  • 関節の変形により、物を掴むなどの日常生活動作が困難になる
  • 貧血や倦怠感、食欲不振、微熱など、全身の症状が現れることもある
その他の症状の特徴
  • 関節リウマチは全身の病気で、関節だけでなく、目、肺、血管、皮膚、神経など全身のさまざまな臓器にも炎症や合併症を起こすことがある
  • 症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことも特徴で、気候やストレスなどで変動することもある

関節リウマチの原因

加齢関連の要因
  • 加齢そのものが関節リウマチの直接的な原因とは言えないが、免疫系の老化は自己免疫疾患のリスクを高める一因となる可能性がある
  • 発症年齢は高齢になるにつれて高くなる傾向があり、中年以降に発症することが多い
生活習慣関連の要因
  • 喫煙は関節リウマチの発症リスクを高め、病気を悪化させる要因となる
  • 歯周病などの感染症が、関節リウマチの発症や悪化に関連している可能性がある
  • 過度なストレスや、身体的・精神的な負荷も病気の悪化に関わる可能性がある
その他の要因
  • 遺伝的な要素も関与しており、親族に関節リウマチの患者がいる場合、発症リスクがやや高くなる
  • 女性に多い病気であり、女性ホルモンが関与している可能性も示唆されている。妊娠や出産を機に発症したり、症状が変化したりすることもある

関節リウマチの治療

薬物療法

関節の炎症を抑え、痛みを和らげ、病気の進行を遅らせることが目的です。

  • 抗リウマチ薬(DMARDs)を主に用い、関節の破壊を抑え、病気の進行を遅らせる
  • 炎症を速やかに抑えるために、少量のステロイド薬を併用することがある
  • 痛みや炎症が強い時期には、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)を用いて症状を和らげる
  • 生物学的製剤や分子標的薬など、病気の原因となるサイトカインや細胞の働きをピンポイントで抑える効果の高い薬剤も使用することがある
リハビリテーション

関節の機能や可動域を維持・改善し、筋力を保つことで、日常生活動作をスムーズに行えるようにすることが目的です。

  • 関節を温める温熱療法や、冷やして炎症を抑える寒冷療法を用いる
  • 理学療法士や作業療法士が指導のもと、関節の動きを柔らかくするストレッチや、弱くなった筋肉を強化する運動を行う
  • 作業療法では、日常生活の動きを楽にするための工夫や、自助具の活用方法などを学ぶ
装具療法

炎症のある関節を保護し、痛みのある関節を安静に保ち、関節の変形を予防することが目的です。

  • 安静を保つために、関節の負担を軽減する装具(サポーターやスプリントなど)を使用する
  • 足底板(インソール)を用いて、歩行時の足のバランスを整えたり、足の痛みを軽減したりする
手術療法

薬物療法などで改善しない痛みや、著しい関節の変形により機能が失われた場合に関節の機能回復を目指すことが目的です。

  • 関節鏡を用いて滑膜(関節の炎症を起こしている部分)を切除する滑膜切除術が行われる
  • 破壊された関節を人工関節に置き換える人工関節置換術
  • 変形した関節の痛みがひどい場合や、関節の安定性が失われた場合に、関節を固定する関節固定術を行う

症状だけで病名を断定することは難しいことが多いです。肘や手首の不調について不安な点やご不明な点があれば、弥富市にある服部整形外科皮フ科までお気軽にご相談ください。