知らぬ間に進行する「沈黙の病」

骨粗鬆症のイメージ画像

骨粗鬆症は、骨の内部がスカスカになり、もろくなってしまう病気です。症状がないまま進行することが多いため、「沈黙の病」とも呼ばれています。

骨粗鬆症により骨密度が低下した状態では、わずかなつまずきや転倒、くしゃみといった日常生活のちょっとした動作でも、骨折を起こしてしまう可能性があります。一度骨折すると、身体機能の低下につながり、その結果、生活の質が大きく損なわれる恐れもあります。最悪の場合、寝たきり状態になり、介護が必要になることも少なくありません。

整形外科疾患24%

寝たきりの原因となる整形外科的な疾患としては、「骨折・転倒」「関節疾患」で全体の約24%を占めております。骨粗鬆症はこれらの増悪因子であり、対策をしなければ寝たきりの危険性が高くなります。

こうした深刻な状況を防ぐためには、骨粗鬆症を早期に発見し、骨折を予防することが極めて重要なのです。

なぜ骨粗鬆症になるのか

骨粗鬆症の原因は、大きく3つの要因に分けられます。

加齢による骨粗鬆症の発症

年を重ねるにつれ、骨密度は低下していきます。これは、加齢に伴いカルシウムの吸収を助けるビタミンDの産生能が低下したり、腸でのカルシウム吸収効率が悪くなるためです。また、加齢とともに食事の好みが変わったり、運動量が減少するといった生活習慣の変化も、骨の健康に影響を与え、骨粗鬆症を進行させます。

ホルモン変化による骨粗鬆症(特に女性)

骨粗鬆症患者の約8割は女性です。これは女性ホルモン、特にエストロゲンの分泌が関係しています。エストロゲンには、骨からカルシウムが流出するのを抑える働きがあります。閉経を迎えると女性ホルモンの分泌が急速に低下するため、骨粗鬆症が急速に進行し、同年代の男性と比べ、女性は急速に骨密度が低くなります。

生活習慣が原因の骨粗鬆症

運動不足や身体を動かさない状態が続くと、骨にかかる負荷が減少し、骨粗鬆症が進行して骨量も減ってしまいます。また、食事からのカルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどの栄養素不足も、骨粗鬆症の原因となり、骨密度や骨質の低下につながります。特に高齢者では、食が細くなり、タンパク質摂取量が不足しやすく、これも骨粗鬆症を招き、骨の脆弱化を招きます。

骨粗鬆症の症状と早期発見

自覚症状が出にくい骨粗鬆症の特徴

骨粗鬆症の怖さの一つに、進行していても痛みなどの自覚症状がないということがあります。気づかないうちに骨粗鬆症が進行して骨が弱くなり、ある日突然骨折を起こすまで、患者様が病気の存在に気づかないことも珍しくありません。

以下のような兆候に気づいたら、骨粗鬆症の可能性があります。

  • 最近、身長が低くなった気がする
  • 背中や腰が丸くなってきた
  • 背中や腰に痛みを感じるようになった

骨粗鬆症の定期検査による予防的対応

骨粗鬆症は発見が遅れるほど、治療が困難になります。特に50歳を過ぎた女性、あるいは骨粗鬆症の家族歴がある方は、症状がなくても定期的に骨密度検査を受けることをお勧めします。

当院では、DEXA法による骨密度検査に加え、血液検査で骨粗鬆症に関連する骨代謝マーカーを評価し、総合的に診断いたします。

骨粗鬆症の治療

3つの治療柱で骨粗鬆症に総合的にアプローチ

骨粗鬆症の治療は、単一の方法ではなく、複数のアプローチを組み合わせることが効果的です。

薬物療法による骨粗鬆症治療

当院では、患者様の骨の状態と全身の健康状態に応じた、適切な治療薬を選択いたします。骨粗鬆症の治療薬は大きく2つのカテゴリーに分けられます。

骨形成促進薬は、新しい骨を形成する骨芽細胞を活性化させ、骨粗鬆症による骨の質を高める薬です。 副甲状腺ホルモン薬(テリパラチド)は、骨芽細胞(骨組織を新しく作る細胞)を直接刺激して骨形成を促進し、骨粗鬆症を改善します。特に骨密度が極めて低い重症患者さまや、骨粗鬆症により既に脊椎の圧迫骨折が複数ある患者さまに適した治療です。注射薬として週1回の皮下注射で投与されます。ただし、治療期間は生涯で最大2年間までと限定されています。骨粗鬆症で骨密度が非常に低下している患者さまに対しても、短期間で効果的に骨密度を増加させることが期待できます。

骨吸収抑制薬は、古い骨が過剰に吸収されるのを抑え、骨粗鬆症による骨密度の低下を防ぎます。 ビスホスホネート系製剤は、破骨細胞(骨を壊す細胞)の活動を抑制し、骨粗鬆症の進行を抑える薬です。飲み薬と注射薬があり、患者様のライフスタイルに合わせて選択できます。飲み薬の場合、毎日1回、週1回、月1回など、様々な服用間隔があります。注射薬は医療機関で月1回、年1回など、投与間隔を選べます。骨粗鬆症による背骨や太ももの付け根の骨折予防に特に効果的です。

選択的エストロゲン受容体作働薬(SERM)は、骨粗鬆症患者さまの骨に対しては女性ホルモン(エストロゲン)と同様に作用して骨密度を増加させますが、乳房や子宮といった他の臓器への影響を最小限に抑えた薬です。特に骨粗鬆症を伴う閉経後の患者さまに用いられます。飲み薬として1日1回の服用です。

抗RANKL抗体(デノスマブ)は、骨粗鬆症による骨吸収を促進するたんぱく質の働きを抑える、比較的新しい生物学的製剤(遺伝子組換え技術や細胞培養技術を用いて製造された薬剤)です。6ヶ月に1回の皮下注射で投与されるため、服用の手間が少なく、骨粗鬆症治療の継続しやすさというメリットがあります。骨粗鬆症による背骨や太ももの付け根の骨折予防効果が認められています。

骨粗鬆症治療薬の選択するポイント

当院では、以下の要素を総合的に考慮した上で、患者様の骨粗鬆症に対して最も適切な治療薬を提案いたします。

  • 骨粗鬆症による骨密度の低下程度
  • 既に骨粗鬆症により骨折をしているかどうか
  • 患者様の年齢と全身状態
  • 他に服用している薬との相互作用
  • 投与方法の利便性と患者様の継続可能性

食事療法による骨粗鬆症の改善

骨粗鬆症の改善には、食事からの栄養管理が重要です。
カルシウムは骨粗鬆症の予防・治療に欠かせない栄養素です。骨の主要成分であり、乳製品、小魚、大豆製品などから積極的に摂取しましょう。
ビタミンDは骨粗鬆症患者さまの場合、カルシウムの腸での吸収を高めることが重要です。魚や卵、きのこなどに含まれています。カルシウムとビタミンDを一緒に摂ることで、骨粗鬆症改善の効果が大幅に向上します。
ビタミンKは骨粗鬆症の治療において、骨の形成を助ける栄養素です。緑色野菜に豊富に含まれています。

特に骨粗鬆症患者さまの中でも高齢者は、総合的な栄養摂取が不足しやすいため、骨粗鬆症対策として、規則正しく、バランスの良い食事を心がけることが基本となります。

運動療法による骨粗鬆症予防・改善

骨は、負荷がかかることで形成される性質があります。適度な運動により、骨粗鬆症のある骨を刺激し、骨量を増やしていくことができます。また、筋肉をバランスよく鍛えることで、転倒予防にもつながり、骨粗鬆症による骨折を防ぎます。

散歩、階段の利用、軽いストレッチなど、日常生活の中で無理なく運動量を増やすことから始めましょう。骨粗鬆症対策の運動習慣が付けば、将来の骨折リスクを大幅に低減できます。

まとめ

骨粗鬆症は、発見が早いほど、そして治療開始が早いほど、予防効果が高まります。また、既に骨粗鬆症により骨密度が低下している方でも、適切な骨粗鬆症治療と生活習慣の改善により、骨の状態を大きく改善させることができます。

身長が低くなったり、最近よく転ぶようになったりといった変化にお気づきでしたら、自覚症状がなくても医師の診察をお受けください。当院では、骨粗鬆症の検査から治療、そして生活指導まで、骨粗鬆症に関するあらゆるご相談にお応えいたします。

あなたの人生の質を守るため、骨粗鬆症の適切な治療と管理は不可欠です。今からでも遅くありません。ぜひ当院へご相談ください。